NHKの「ファミリーヒストリー」とは
「ファミリーヒストリー」は、2008年以降、NHK総合テレビで不定期に放送されている番組です。
内容は、著名人の先祖や父母がいかに生き抜いてきたか、という家族史を、本人に代わって徹底取材し、その人物の「アイデンティティ」や「家族の絆」を見つめる番組です。
日本国内外や関連人物への取材VTRとそれを視聴する本人の感想で構成する、驚きあり、感動ありのドキュメント番組です。
私(萩本勝紀)も毎回楽しみに見ています。
番組を見る限り、私が行っている先祖調査と同じ方法で調査を行っていることが分かります。
そこでこれまで放送された番組の中から一本取り上げて、NHKの取材スタッフがどのように調査したのかを考察してみたいと思います。ただし番組一編すべてを紹介するスペースもないため、番組の一部のみ考察してみます。
竹中直人 2016年1月15日放送
■本名、竹中直人(1956年生まれ)
■母方、長谷川家(長崎県五島市)
■父方、竹中家(青森県弘前市)
竹中直人さんが今の自分の姿を一番見てもらいたいのは母・芳枝(享年54)だった。
重度の結核で亡くなった母は生前「自分の本当の故郷は長崎」と口にしていた。
映像(YouTubeより)
竹中直人 2016年1月15日放送映像 ←申し訳ございません、現在は見られなくなっています。
※番組の冒頭から概ね10分間が母方・長谷川家の調査部分です
母方・長谷川家の調査結果(番組のまとめ)
長崎県五島列島(長崎県五島市の福江島)が最古の本籍地である。
五島観光歴史資料館に五島福江藩士の『分限帳(藩士名簿)』が所蔵されている。
その分限帳に「長谷川平三郎」と記録がある。
平三郎は母方4代前の高祖父にあたる人物である。
郷土史『五島編年史』に、「越前の絵師長谷川当鶴を招聘し新家を取り立てる」と記載がある。平三郎は「東鶴」の通称で、平三郎の本職は絵師であった。
※越前は現在の福井県
絵師として京都で活躍したしていた時に五島福江藩主にその腕を見込まれ、嘉永元(1848)年12月1日、五島福江藩の召し抱え絵師となり五島へやってきた。
東鶴の大きな屋敷跡が今も残っている。
東鶴の実物の絵を所有している人(藩士子孫)が見つかった。
NHKはどのように取材したか(萩本勝紀の考察)
事前調査(主に文献調査、電話・手紙による調査)と現地調査により先祖が判明したと言えます。
●事前調査
@本人の委任状により直系の戸籍を収集した筈です
→これによって最古の本籍地を知る
直系・兄弟姉妹を知る
家系図を書く、番組でも系図(抜粋)で表示されました
A本籍地の地名辞典・郷土史を読んだ筈です
→これによって長崎県五島市の歴史を把握する。
後藤福江藩を学ぶ
B五島市教育委員会に尋ねた筈です
→古文書の調査
五島観光歴史資料館学芸員と話す
C手紙・電話をして情報収集や確認をした筈です
→同姓、本家に手紙(電話)、訪問のアポを取る
東鶴の絵の所有者探し。訪問のアポを取る
番組でも登場していました
以上の4つの調査活動を行いながら、現地に取材スタッフが訪問したといえます。
●現地調査
これは番組で紹介されたとおりです。
・歴史資料館で古文書閲覧
・本家筋宅を訪問、屋敷跡を訪ねる
・東鶴の絵の所蔵者を訪問する
この結果、資料館に残る古文書、郷土史、屋敷跡により、先祖の職業・暮らしぶりが判明しました。
NHKは何人ものスタッフがチームで調査をしていると思いますが、その方法は、私が行っている方法とほぼ同じことが分かります。
彼らの費用(時間、労力)も大方推測がつきます。
時に海外の取材もしていますし、個人が入れないような官庁などの資料庫に入っている映像があります。この点はうらやましい限りです。
私も日々研鑽し、ご依頼人の先祖調査に忍耐強く挑戦し、多くの成果をあげています。
萩本勝紀(行政書士・姓氏研究家)