NHKの「ファミリーヒストリー」とは
「ファミリーヒストリー」は、2008年以降、NHK総合テレビで不定期で放送されている番組です。
内容は、著名人の先祖や父母がいかに生き抜いてきたか、という家族史を、本人に代わって徹底取材し、その人物の「アイデンティティ」や「家族の絆」を見つめる番組です。
日本国内外や関連人物への取材VTRとそれを視聴する本人の感想で構成する、驚きあり、感動ありのドキュメント番組です。
私(萩本勝紀)も毎回楽しみに見ています。
番組を見る限り、私が行っている先祖調査と同じ方法で調査を行っていることが分かります。
そこでこれまで放送された番組の中から一本取り上げて、NHKの取材スタッフがどのように調査したのかを考察してみたいと思います。ただし番組一編すべてを紹介するスペースもないため、番組の一部のみ考察してみます。
壇蜜 2016年3月24日放送
■本名、齋藤支靜香(しずか、1980年生まれ)
■父方、齋藤家(岩手県奥州市)
■母方、伊藤家(秋田県)
映像(YouTubeより)
壇蜜 2016年3月24日放送映像 ←申し訳ございません、現在は見られなくなっています。
※番組の冒頭から概ね10分間が父方・齋藤家の調査部分です
父方・齋藤家の調査結果(番組のまとめ)
岩手県奥州市は、独眼竜政宗の伊達家、仙台伊達藩の足軽(歩兵)が集まった地域であった。※元和8(1622)年、足軽軍団が移住した。
齋藤本家に残る古文書「岩谷堂御足軽組文書」に、足軽組頭の「齋藤甚内」が記載されている。これによって、足軽組の頭を勤めていた事が判明した。
齋藤家は、足軽頭として足軽を取り仕切るかたわら剣術の師範として多くの弟子をかかえていた。
「齋藤新兵衛」(齋藤家7代目)は、城主にも手ほどきをするほどであった。
一番の出世頭は「齋藤雄山」である。
慶応2(1866)年仙台藩は江戸の警備を命じられるが藩の財政は逼迫。江戸の仙台藩上屋敷は玄関先の幕さえ掲げられなかった程だった。
それを聞いた雄山は江戸の仙台藩屋敷に家紋入りの幕を献上した。
藩主からその忠義が高く評価され、階級12位の御預足軽組(歩兵クラス)から4位の中小性組(ちゅうごしょうぐみ)に出世を果たし、城内での仕事を獲得した。
NHKはどのように取材したか(萩本勝紀の考察)
事前調査(主に文献調査、電話・手紙による調査)と現地調査により先祖が判明したと言えます。
●事前調査
@本人の委任状により直系の戸籍を収集した筈です
→これによって最古の本籍地を知る
直系・兄弟姉妹を知る
家系図を書く、番組でも系図(抜粋)で表示されました
A本籍地の地名辞典・郷土史を読んだ筈です
→これによって岩手県奥州市の歴史を把握する
伊達藩を学ぶ
B奥州市教育委員会(生涯学習課など)に尋ねた筈です
→郷土史家を紹介してもらう
博物館学芸員と話す
番組でも登場していました
C手紙・電話をして情報収集や確認をした筈です
→同姓、本家に手紙(電話)、訪問のアポを取る
村の寺(菩提寺)に手紙(電話)、訪問のアポを取る
番組でも登場していました
以上の4つの調査活動を行いながら、現地に取材スタッフが訪問したといえます。
●現地調査
これは番組で紹介されたとおりです。
・お寺を訪問する、住職に話を聞く
・郷土史家、学芸員から話を聞く
・本家筋宅を訪問する
この結果、本家に残るたくさんの古文書によって、先祖の職業・暮らしぶりが判明しました。
NHKは何人ものスタッフがチームで調査をしていると思いますが、その方法は、私が行っている方法とほぼ同じことが分かります。
彼らの費用(時間、労力)も大方推測がつきます。
時に海外の取材もしていますし、個人が入れないような官庁などの資料庫に入っている映像があります。この点はうらやましい限りです。
私も日々研鑽し、ご依頼人の先祖調査に忍耐強く挑戦し、多くの成果をあげています。
萩本勝紀(行政書士・姓氏研究家)