附籍とはInformation of Local History
私は先祖調査業務で何百通もの戸籍を見てきましたが、明治19年戸籍でごくたまに載っている「附籍(ふせき)」について説明します。
附籍(ふせき)とは
附籍とは、血縁関係にない者でも「養育されるものはその養育する者の戸籍に入れる」という制度で、まったくの他人でも同一戸籍に入ることができました。使用人など居候のようなイメージです。
(戸籍例)
婦 附籍 附籍 養女 長女
附籍制度のはじまり
明治5年の壬申戸籍(最初の全国的戸籍)で「附籍」という新たな制度が設けられました。
第二十九則 此迄厄介ト号セシモノ或ハ縁故アリテ養育スルモノ等
附籍者は、例えば、妻の連れ子や、離婚後に実家に復籍する妻(戸主の娘)の子、叔父、叔母、甥や姪、あるいは、戸(家)に同居する使用人などの非血縁者を同一戸籍に組み込まれました。
これらの附籍者は、戸主(今でいう筆頭者)の正式な家族とは認められず、戸籍上、戸主、家族の後に記載されました。
附籍制度の問題点
一家全部が他の家の附籍となる全戸附籍が認められていたため、全戸附籍の場合、附籍となる前の戸も維持されるものと見なされたため、附籍先の戸には2つの戸(二重戸籍のような実態)が存在することになりました。
これは、「戸主とその家族で構成される一つの戸」を単位に編成した壬申戸籍制度の原則に、矛盾し混乱を招く結果を呈しました。
壬申戸籍の後の明治19(1886)年戸籍でも附籍制度は維持されていました。現在私たちが見る「附籍」の記載は、この明治19年式戸籍です。
明治民法(旧民法) 附籍の廃止
明治31(1898)年に「民法親族編」(明治民法)が施行されました。
従来から「家」制度にそぐわないものとして廃止が検討されていた附籍制度は、この旧民法の精神に則り廃止されました。
戸籍は〈戸=家〉の同一血縁者のみとして、非血縁者は、自身の戸籍に記載されるのみとなりました。
旧民法第732条
1 戸主ノ親族ニシテ其家ニ在ル者及ヒ其配偶者ハ之ヲ家族トス
2 戸主ノ変更アリタル場合ニ於テハ旧戸主及ヒ其家族ハ新戸主ノ家族トス
「戸主の親族にしてその家にある者及びその配偶者は之を家族とす」であり、附籍者は、ここに規定する家族とはおのずから異なり、また、その家の氏を称すべき者でもないので、同一戸籍に留まることは許されないとされました(明治31.7.23民刑)